平成ペイン6

平成ペイン6

6  風呂上がりの清潔な体でまた雨の中に出ていかなければならないのは億劫だった。しかしこんなところで止まってもいられない。僕は先に進まなければならない。雨の中峠道を進み続ける間に僕の中ではますます懺悔のような感情が強くなっていった。僕は僕の家族についてもっと考えなければならない。ポンチョ型の雨合羽を着て赤いママチャリに...

平成ペイン5

平成ペイン5

5  僕の悪徳の中で最もタチの悪いものは高校を三ヶ月間休んでいた頃に顕著に現れ始めた人間嫌いだろう。それ以後の僕はいつもどこか人間に対して嘲りと軽蔑を持っていたように思える。日ごとに人間のインチキが我慢ならなくなっていく。そしてそんな僕が一番嘲りを持って見つめているのはいつも自分自身であった。他人のことはどうにもならな...

平成ペイン3

平成ペイン3

3  僕が新入生として福井に引っ越して来た春。足羽川沿いの桜並木を眺めながら、その時の僕もどうしてこんなところにいるのだろうと考えていた。風はまだ少し冷たい。曇り空の下で少し強い風が桜の枝を揺らし、花びらが無造作に撒き散らされていた。それでも多くの人にとってその光景はもう少し好意的に捉えられたのだろう、春の訪れに柔らか...

平成ペイン2

平成ペイン2

2  僕は高校生まで太平洋側の地元三重県で暮らし、大学進学に伴い日本海側の福井県福井市に引っ越してきた。この地で夏を迎えるのは今年で三回目になる。太平洋側で暮らしてきた僕のイメージでは北陸といえば雪。冬こそ厳しいけれども夏は涼しく暮らせるのではないかと世間知らずに思っていたのだが、日本の夏の暑さはどこでもたいして変わら...

まどろみの嫌悪

まどろみの嫌悪

2018年12月28日 喉の渇きで目を覚ました。布団に包まったまま腕を伸ばし顔の横にあるはずのiPhoneを探す。画面の明るさに目をすがめた。時刻はまだ五時台を示していた。 もう少し眠れる。もう少し、もう少しと布団から出ることを先送りにしているうちに、いつも遅刻ぎりぎりの時間になってしまう。住み込みの仕事場で、布団から...

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