2019/4/6

平成ペイン4

平成ペイン4

4  それなのに、僕は未だなぜかこの地に留まっている。小説は書いたのか?もちろん書いていない。なぜ書かないのか?僕にもわからない。書くことがないのだ。考えれば考えるほど、僕の中には何もないように思えた。自分というものは本当に存在するのだろうか?こうやって考えているのもどこかの誰かの言葉を借りたものでしかない気がする。本...

平成ペイン3

平成ペイン3

3  僕が新入生として福井に引っ越して来た春。足羽川沿いの桜並木を眺めながら、その時の僕もどうしてこんなところにいるのだろうと考えていた。風はまだ少し冷たい。曇り空の下で少し強い風が桜の枝を揺らし、花びらが無造作に撒き散らされていた。それでも多くの人にとってその光景はもう少し好意的に捉えられたのだろう、春の訪れに柔らか...

平成ペイン2

平成ペイン2

2  僕は高校生まで太平洋側の地元三重県で暮らし、大学進学に伴い日本海側の福井県福井市に引っ越してきた。この地で夏を迎えるのは今年で三回目になる。太平洋側で暮らしてきた僕のイメージでは北陸といえば雪。冬こそ厳しいけれども夏は涼しく暮らせるのではないかと世間知らずに思っていたのだが、日本の夏の暑さはどこでもたいして変わら...

平成ペイン1

平成ペイン1

1  理由のない絶望、なんて書くとあまりにも大げさだが、対象のないこの苛立ち、焦燥感、息苦しさは昔からずっとつきまとっていた。目の前が真っ暗になる。足元が突然抜けるような感覚。そんなありきたりで被害者ぶったことを言うわけではない。もっと漠然とした、意識にのぼるかのぼらないかあたりにぼんやりと浮かんでいる赤い風船のような...

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